« 2016年柳瀬川の桜開花状況---その5 満開宣言 | トップページ | 「久米宏 ラジオなんですけど」城南信用金庫 吉原毅さんの脱原発がすごい »

2016年4月 6日 (水)

作業員の損害賠償請求は当然と思う---慶応大学校舎改修工事でのアスベスト飛散

慶応大学矢上キャンパスの教育研究棟の改修工事において、アスベスト粉じんを浴びた作業員が、発注者の慶応大学と施工者である株式会社大林組に対し、謝罪と損害賠償、長期の健康診断負担を求めたとの「3月17日東京新聞朝刊記事」を読みました。
これは当然の権利だろうと思う反面、工事契約した下請けの施工会社作業員が、工事の発注者と施工請負会社を訴えるには、かなりの勇気がいる行為だと思いました。と同時に作業員がアスベスト吸引の危険性を良く理解していたからこそ、取れた行動だという事も伝わりました。

現場作業員のアスベスト被曝事故の起きた改修工事について、もう少し詳しく書いておきます。
場所は、横浜市港北区の慶応大学矢上キャンパスの中の教育研究棟(23棟)です。(建物の竣工は1971年11月と約45年前の建物です)
この教育研究棟の実験室203室(改修後210号室となった)の改修工事で、天井塗装の剥離作業中に大量のアスベスト粉塵が飛散してしまいました。
新聞記事の作業員の話によると「天井の塗装をはがすと、グレーの建材が現れた。かき落すと、大量の粉塵が顔や頭に降り掛かってきた。5分もたたずに室内は真っ白になった」
「換気しないと仕事にならないほど。一時間ごとに目張りをはがして窓を半開きにして換気し、室内に立ち込めた粉じんが収まるのを待った」

 作業員は、市販のマスクと普段の作業着で仕事をしたそうで、かき落としたのがアスベストだとしたら、凄まじいばかりの現場状況です。
この建物が竣工した1971年当時は、アスベストの危険性は云われていましたが、まだ日本の建設現場では比較的安価で耐火、断熱、防音性能に優れていることから、多量に使用されていました。石綿含有率30%超の吹き付けアスベストが原則禁止になったのが 1975年、5年後の1980年に石綿含有率5%超の吹き付けアスベストが原則禁止になったのです。
建物の仕様などが、発表されていないので現場の詳細はわからないのですが、僕が推察するに、この実験室の天井のコンクリートスラブに直接、青石綿が吹き付けられ、その上に白色の化粧塗装がされていたと思われます。
もし、この実験室に二重天井があり、それをを撤去した後の天井剥離作業であれば、状況は少し異なるので、このことは、最後に書きましょう。

 剥離作業を始めたところ、発生する多量の粉じんを不審に思った作業員が、何度か「アスベストではないのか?」と訴えましたが、大林組の現場監督に無視されたと話しています。
この大林組現場監督は剥離した実物を見なかったのか、見てもアスベストと疑わなかったのか、アスベストを知らなかったのか、全く信じられないような話です。
石綿飛散防止策の度重なる国の規制が行われた後でも、これが建設現場で日常行われているアスベスト除去の、ずさんな実情なのでしょう。
僕が関わった事のある在日米軍施設工事では、日本でアスベストの危険性が認識されるずっと以前から、厳しい規制が行われていました。
十数年前の事ですが、赤坂にある米軍広報関連施設の改修工事では、事務室床の僅か15平米ほどの2mm厚アスベストタイル(通称Pタイル)の撤去に、(今でこそ日本でも同じような国の規制が定められていますが、)作業現場の完全な密閉性と、粉塵が外部に漏れないように内部空気の負圧維持の換気装置が求められていました。
そして、撤去したアスベストタイルの建物内運搬の際の、数量確認、(施工前のタイル数と撤去後の数量調査)完全包装廃棄処理の報告書の提出も義務付けられるのです。大林組の工事のように、目の粗い麻袋に入れて運搬など考えられないのです。
他の米軍施設工事では、もっとずさんな工事もあったと考えらえるのですが、こと施設内で働く軍人、軍属、職員の安全が脅かされることに関しては、自国民の保護が最優先なのです。工事会社は、万一の人的被害に発生する多額の損害賠償にも配慮して、慎重な工事を徹底しました。
振り返って今度の実験室の改修工事に見られる日本の工事のレベルを考えると、現在でも床のアスベストタイルの撤去などは、その危険性を認識していない、すなわち通常建材の撤去、廃棄処分と同じような工事が行われているのではないかと思ってしまいます。
この慶応大学の工事に関して、本当に情けなく思うのは、発注者である慶応大学信濃町管財課環境担当部署株式会社大林組の現場管理者のアスベスト被害に対する認識の無さです。
吹付けアスベストは、当初は安定していても、年数が経過すると吹付け石綿の劣化が生じ、アスベストが飛散しやすい状態になります。二重天井の存在の有無について、後で書くと云ったのは、この実験室の天井が、天井スラブに直接吹付けた青石綿のアスベスト仕上げであったとしたら、改修工事で粉じんを多量に浴びた作業員のみならず、この実験室を長く使用してきた教授、学生たちの健康問題にまで及ぶからです。
 青石綿は、石綿の中でも死亡率の高い中皮腫を発症する危険性が大きいとされています。
アスベスト災害について前にも書きましたが、僕は3人の友人、知人をアスベスト被曝で失っています。
鉄道車両整備工場に勤務していた旧い山友達は、若い頃、僅か2年弱配属されたブレーキ関係の職場で、アスベストを吸引し、40年後に突然発症した中皮腫で亡くなりました。
労働組合がしっかり対応して、勤務記録も残っていたので、労災の適用になりましたが、本人は最後まで、こんなことになるなんてとは、信じられない気持だったようです。
一緒に建築を学んだ友人は、大手建設会社の長期にわたる現場管理者としての仕事で、少しずつアスベストを吸引して、退職後肺がんで亡くなりました。共に肺には附着したアスベストの痕跡がはっきりと残っていました。
数年、または長期にわたる被曝だけでなく、数日の作業でも被曝して死亡した例も報告されていますし、隣地の解体工事で被曝した幼稚園児の事が報道されたこともあります。
長期の潜伏期間で発症するのがアスベスト被害です。
まだアスベストが多量に使用されていた時代の被曝が原因で発病するのは、これからがピークを迎えると考えられています。
それだけでも恐ろしいのに、今度は解体、撤去作業でのあらたな被曝が防げないとは、悲しいことです。
今回のアスベスト被害に遭った作業員が、謝罪と損害賠償、並びに将来にわたる年一回の健康診断負担を求めているのは当然のことだと思います。
この作業員はアスベスト吸引の恐ろしさ、その後の発病などを、職場経験からよく理解していたものと思います。
通常の生活環境では、吸い込んだアスベスト(石綿)は一部は異物として痰のなかに混ざり、体外に排出されますが、この作業員が遭遇した今回のような大量のアスベスト(青石綿)を吸い込んだ場合や、大きなアスベスト(石綿)は除去されずに肺内に蓄積されます。
多分、十分に配慮されたアスベスト除去作業環境の、十数年分を吸引してしまった恐れがあります。
それを取り除くのは、ほとんど不可能です。この作業員には、今後なるべくアスベスト吸引を避けて生涯の吸引数を減らす努力が求められるようになってしまいました。
それと同時に工事でキャンパス内に飛散したと思われるアスベストの危険性、そして実験室での長期被曝の教職員、学生の健康診断について、慶応大学は真剣に取り組んでほしいものです。
 現在の福島原発の健康被害、そしてビキニ環礁水爆実験での多数の漁船員の被ばくも、全く同じ構図をたどっていますが、アスベストの健康被害が外国では明るみにされて来ていたのに、専門家を抱き込んだ政官、業界勢力の一部が、その過小評価に躍起となった結果、数十年後に取り返しのつかない事態が生じています。

最後に付け加えるならば、慶応大学矢上キャンパスの教職員、学生はキャンパス内で長期に渡り、アスベスト飛散が放置されてきたと思えるので、危険性が考えられる状況の自身の記録を残して、万が一の将来の発病と損害賠償に備えるべきだと、身近にアスベスト被害で友人を亡くした僕から伝えたいと思います。残された家族が、アスベスト被ばくの実証にどれだけ苦労したかをよく知っているからです。
それにしても、前回書いたマンション建築でのコンクリート梁貫通のダイヤモンドカッターの乱用などに見られる建設現場の管理体制の劣化は、他の多くの事例も伝え聞くにつけ気が重くなるばかりです。

 

|

« 2016年柳瀬川の桜開花状況---その5 満開宣言 | トップページ | 「久米宏 ラジオなんですけど」城南信用金庫 吉原毅さんの脱原発がすごい »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 2016年柳瀬川の桜開花状況---その5 満開宣言 | トップページ | 「久米宏 ラジオなんですけど」城南信用金庫 吉原毅さんの脱原発がすごい »