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2015年5月24日 (日)

「中学歴史教科書に見るポッダム宣言」その2

中学歴史教科書に見るポッダム宣言」その1の続き」
東京書籍、清水書院、自由社の3者に続き、その2」では教育出版、帝国書院、育鵬社の中学歴史教科書のポダム宣言に係わる部分の記載を書きます。

「その1」の3社の教科書には、ポッダム宣言の条文記載は有りませんでしたが、「その2」の3社には記載条文の違いはありますが、ポッダム宣言全13条の一部が、要約ながら記載されています。
ポッダム宣言の日本文(翻訳文)は、外務省仮訳が発表されています。
参考までに今日の巻末にコピーしておきますが、わかりにくい文です。

安倍総理
が、日本共産党の志位委員長との党首討論で、ポッダム宣言を読んだことがあるのか、無いのか、わけがわからないことを言っていましたが、読む読まないというほどの条文ではなく、紙一枚に収まる短いものです。
安倍総理はおそらく目を通したことはあっても、難解な文体に、目が拒絶反応を起こし理解することはできなかったのでしょう。それが(ポッダム宣言を)
「つまびらかに承知しているわけではございませんが」などという変な日本語になってしまったというわけです。
http://article9.jp/wordpress/?p=4899 澤藤統一郎の憲法日記より
でも、安倍首相は知らなくても、ポッダム宣言の全13条は、日本の命運を決めた重要な文書です。
日本政府はポッダム宣言の重要性を認識しようとしてこなかった、いやあまり白日のもとに晒したくなかった。
中国との関係や、第8条で履行されると書かれた
「カイロ宣言」に含まれる領土問題に必然的に絡んでくることでもあり、できればそっとしておきたかった。
ポッダム宣言にたいするこういった内向きな姿勢が、日本国首相でさえもその内容を理解していないといった状況を生み出してしまったのです。
連合国側による、その作成から発表、日本側の受け取り方の記述も大事ですが、宣言文の内容がどんなものであるのか、理解しておかねばならない日本史として、中学生の歴史教科書と言えども、全文掲載があっても良いのではと思います。
失礼ながら、安倍首相には難しすぎても、普通の中学生なら、読んで書かれていることを理解することはできます。
変に省略、要約するから日本軍は無条件降伏したが、日本政府は無条件降伏していないなどといった読み解きも生まれてくるのです。

日本は、歴史を反省して次の方向性を見出すことに稚拙です。いや、歴史だけでなく、公害問題や原発事故などにも見られるように、物事全てに対して、反省の二文字が欠け、責任の所在を明確にする事を拒みます。
太平洋戦争での日本の犯した戦争犯罪を認めず、このポッダム宣言にも見られるように隠そう、隠そうとする姿勢が顕著なのです。
そして、近年特に目立つのは、視野を広げ、客観的に歴史を見ようとしても、これに激しく反論して、おのが土俵での議論に固執する狭量なる精神での主張が声高なことです。必ず、日本の未来を誤らせる一因となります。

4、
教育出版 中学社会 歴史 未来をひらく
223頁に記載があります。
「原爆投下と日本の降伏」
1945年2月、アメリカ・イギリス・ソ連の首脳は、黒海沿岸のヤルタで会談し、ソ連の対日参戦と千島領有などを秘密に取り決めていました。
7月には、三国の首脳が再びドイツのポッダムで会談し、日本の降伏の条件を示すポッダム宣言を発表しましたが、日本はこれを無視しました。
(省略 原爆投下、ソ連の参戦などの記述)
こうしたなかで日本は8月14日、ついにポッダム宣言を受け入れ降伏しました。
国民はこの敗戦を翌15日の天皇のラジオ放送によって、初めて知ることとなりました。
8月15日は、朝鮮はじめ日本の植民地や占領地の人々にとって、民族解放の日となりました。

教育出版教科書に記載された「ポッダム宣言」(一部の要約)
6、日本国民をだまして、世界征服に乗り出すという過ちを犯させた者の権力と勢力は永久に除去する。
7、新たな秩序が建設され、戦争する能力がなくなったことの確証が得られるまでは、連合国の指定する日本国内の諸地点は占領される。
8、日本国の主権は、本州・北海道・九州・四国および連合国の指定する諸小島に限定される。
10、いっさいの戦争犯罪人には、厳重な体罰が加えられる。言論、宗教および思想の自由、ならびに基本的人権の尊重は確立される。

5、帝国書院 社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き
218頁に記載があります。
「4、ポッダム宣言と日本の敗戦」
一方、連合国側は1945年2月にヤルタ(ソ連)で会議を行い、ソ連の対日参戦とその見返りに千島列島をソ連の領土とするなどの密約を結びました。
7月のポッダム(ドイツ)での会議でアメリカ・イギリス・中国の名前で日本の無条件降伏をうながす共同宣言をだしました。(ポッダム宣言)
「原爆の投下」
ポッダム宣言を日本が黙殺したため、アメリカは戦争の早期終結とともに、ソ連に対して優位にたつため、8月6日に広島に、8月9日に長崎に原子爆弾を投下しました。
(省略 原子爆弾の被害、ソ連参戦などの記述)
この結果、日本はポッダム宣言なら天皇制を維持できることなどを理由に、14日にポッダム宣言を受け入れて降伏することを決め、翌15日、天皇はラジオ放送でこれを国民に知らせました。
帝国書院教科書に記載された「ポッダム宣言」
6、日本国民をだまし、世界征服にのりだすといったあやまちをおかした者の権力と勢力は永久に取り除かなくてはならない。
8、日本の主権が及ぶのは本州、北海道、九州、四国と連合国が決める島にかぎる。
13、われらは、日本国政府が軍隊の無条件降伏を宣言することを求める。これ以外の選択は急速で完全な壊滅があるだけである。

6、育鵬社 中学社会 新しい日本の歴史
220頁と221頁に記載があります。
「ドイツの降伏」
ヨーロッパでは、アメリカの参戦で連合国の反攻が開始され、1943年9月、まずイタリアが降伏しました。ドイツも、スターリングラードでソ連軍に敗れ、以後敗退を続けました。1944年、連合国はフランスに上陸してパリを解放すると、東西からドイツに攻めこみました。ヒトラーは自殺し、1945年5月にドイツは無条件降伏しました。
これより先、米・英・ソ連の首脳はソ連のヤルタに集まり、戦後処理について話し合いました」(ヤルタ会談)。アメリカのルーズベルト大統領はソ連の対日参戦を求め、ソ連のスターリンは、その代償に日本領である樺太(サハリン)の南半分と千島列島を要求しました。
ドイツ降伏後の7月、ドイツのベルリン郊外でポッダム会談が行われ、連合国は日本への降伏条件を示したポッダム宣言をアメリカ、イギリス、中国の名で発表しました。

「原爆投下とソ連の参戦」
(省略 原子爆弾の投下とソ連の参戦の記述)

「日本の敗戦」
相つぐ悲報の中、政府では昭和天皇の隣席のもと、ポッダム宣言の受け入れをめぐる会議が開かれました。(御前会議)。賛否が同数に分かれたため、首相の鈴木貫太郎は天皇の判断(聖断)を仰ぎ、天皇はポッダム宣言を受諾し降伏するという外務大臣の意見を支持しました。それにより、内閣は、受諾を決定しました。8月15日正午、ラジオで天皇の声を録音した玉音放送が全国に流れ、戦争の終結が知らされました。日本軍は武器を置き、戦争は終わりました。(省略、戦地からの引きあげ、ソ連のシベリア抑留などの記述)

育鵬社教科書に記載された「ポッダム宣言」(一部要約) 
(同じようにポッダム宣言の一部要約を記載した教育出版、帝国書院と異なり、育鵬社はなぜか項目番号を外して、宣言の要旨をわかりにくくしており、かつ要約とは云え、大事な記述を意図的と思えるような省略をしています。)
よって、記述された8、10、13の外務省翻訳と現代語訳を列記して、比較できるようにしました。
われらの条件は次のとおりである。
●日本国の主権は本州、北海道、九州、四国さらにわれらが指定する島々に限定される*現代語訳(8)カイロ宣言の条項は履行されるべきで、また日本国の主権は本州、北海道、九州、および四国ならびに我々の決定する諸小島に限定するものとする。

*外務省翻訳 、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

●日本政府は、国民の中に民主的傾向が復活し、強まることに対する障害をすべて除去し、基本的人権の尊重を確立しなければならない。

*現代語訳 (10)我々は日本人を民族として奴隷化しようとしたり、また、国民として滅亡させようとするつもりではないが、我々の捕虜を虐待した者を含む全ての戦争犯罪人に断固たる処罰を加える。日本政府は日本国民の間に、民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障害は、これを排除する。言論、宗教、思想の自由、ならびに基本的人権の尊重は確立されなければならない。

*外務省翻訳 、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ

●われらは、日本政府がただちに日本軍全軍の無条件降伏を宣言し、その行動について誠実に保障することを要求する。.
*現代語訳(13)我々は、日本国政府がただちに、全ての日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、かつ、その行動における日本国政府の誠意による適当かつ十分な保証を提供することを日本国政府に対し要求する。これ以外の日本国の選択は迅速にして完全な壊滅があるだけである。
*外務省翻訳 十三
、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス
Dsc00165_1024

(写真、上より)
清水書院
自由社
教育出版
帝国書院

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参考 「ポツダム宣言」

千九百四十五年七月二十六日
米、英、支三国宣言
(千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ)

  • 、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ
  • 、合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ
  • 、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ
  • 、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ
  • 、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
    吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス
  • 、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス
  • 、右ノ如キ新秩序カ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力カ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ルマテハ聯合国ノ指定スヘキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スルタメ占領セラルヘシ
  • 、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ
  • 、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ
  • 、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ
  • 十一、日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルカ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラス右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルヘシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルヘシ
  • 十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ
  • 十三、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス
(出典:外務省編『日本外交年表並主要文書』下巻 1966年刊)

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