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2011年12月14日 (水)

海賊対処法によるソマリア沖船舶護衛その23(2011年11月) 月間護衛船舶数が僅か4隻!---それなのに日本船主協会と経団連は特権意識丸出し

インド洋給油活動の時と同じように、派遣前には、あれほど大騒ぎしたマスコミが、その後の状況をまったく報じなくなった、海賊対処法によるソマリア沖派遣護衛艦の毎月の活動を書いています。(防衛省、国土交通省海事局発表資料、ソマリア沖EU部隊、NATO部隊資料、海上自衛隊情報、ジブチ情報その他資料による)

*平成23年11月の海賊対処法による船舶護衛実績(297回護衛~305回護衛の9回)
 護衛艦(第9次派遣部隊)297回まで  106さみだれ 158うみぎり
     (第10次派遣部隊)298回以降 110たかなみ 111おおなみ
 
 護衛した船舶  日本籍船 0隻 
            日本の船舶運航事業者が運航している外国籍船   4隻
                   合計4隻  1回平均0.4隻
           
               外国籍船 51隻  1回平均5.6隻  

護衛回(日程)                   日本籍船  日本関係外国籍船   外国籍船
297 (10/ 31- 2)    西行き       0         0           5 
(11/2-6)   ジブチ基地にて補給、休養
298 (11/6-9)       東行き        0           1            8
299 (11/9-11)     西行き       0            1           7
300 (11/12-14)     東行き      0            1           7
301 (11/14-16)     西行き      0           1           3      
(11/16-19) ジブチ基地にて補給、休養
302 (11/19-22)    東行き      0          0            4   
303 (11/22-24)     西行き      0           0           8
304 (11/24-26)     東行き       0           0           2
305 (11/27-29)     西行き       0           0           7
(11/29-)    ジブチ基地にて補給、休養

合計                              0                   4                    51

11月の海上自衛隊護衛艦による船舶護衛回数は9回。
そのうち日本貿易関係船舶すなわち日本籍船、及び日本関係外国籍船の護衛数は僅か4隻でした。
護衛艦2隻による9回の護衛船団のうち、1隻が4回、残り5回の船団には日本関係船舶の姿は1隻も見当たりません

本来は日本関係船舶の護衛で手一杯の筈だった海上自衛隊護衛艦が守るのは、日本の船舶運航会社の運航した外国籍船より(4隻中国の船舶運航会社の運航した船舶(全て中国籍船6隻)のほうが多いという、なんとも皮肉な状況が生まれつつあります。

船舶護衛の現状は、日本経団連の次のような要望とは、かけ離れたものなのです。
今後は派遣規模をさらに拡大し、護衛艦と哨戒機の数を増やす必要がある。あわせて、海上給油により護衛艦の活動範囲や頻度の拡大を可能にするため、補給艦を派遣すべきである。」---日本経団連提言書より

護衛船団に加わる外国籍船のうち、どこの国も自国籍の船舶を持っているのですが、前回(その22)で書いたように、日本はほとんど日本籍船を所有していません。
この原因は海運にたいする戦略も展望も無い自民党政権の施策が大きいのですが、大手船会社の税金対策と経費節減による結果も一因です。
ちなみに平成21年7月28日から平成23年11月30日までの2年半の間、海賊対処法による船舶護衛の船舶合計2206隻のうち、日本籍船は僅か13隻しかありません。

その現実を忘れたかのように、10月18日に「日本船主協会」は船会社が必要とする場合には、自衛官や海上保安官など「公的」な武装ガードの乗船を求める要望書を提出したのです。

2011年10月18日
社団法人 日本船主協会

「日本籍船への「公的」武装ガードの乗船に関する要望について」
今般、当協会では、わが国政府に対して、民間人による武器の所持が禁止されている
日本籍船について、船社が必要とする場合に自衛官や海上保安官など「公的」な武装ガードの乗船を可能としていただきたいとする要望書を国土交通大臣、防衛大臣、内閣官房長官、外務大臣、海上保安庁長官に提出いたしました。
http://www.jsanet.or.jp/pressrelease/2011/pdf/20111017.pdf  船主協会要望書   

船主協会要望書の提出に歩調を合わせるように「日本経団連」も同じ10月14日に、次のような発表をしました。(提言の日付は日本船主協会と同じ10月18日)
「経団連は14日、近年被害が急増しているソマリア沖の海賊対策の強化を求める提言を発表した。
現在自衛隊が派遣している2隻の護衛艦と2機の哨戒機の拡大を要望。給油用の補給艦派遣や現在は認められていない外国船籍への給油が可能になるよう法的な整備も求めた。
日本船籍の船舶に武装した自衛隊員や海上保安庁職員を同乗させ警備を強化すべきだとしている。」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/100/honbun.pdf  経団連提言

特にこの提言のうち、次の部分は、何様のつもりだと言わざるを得ないものです。

4.強化すべき具体的な海賊対策
今後、強化すべき具体的な海賊対策として、
以下の4つを求める

(1) 自衛隊の派遣規模の拡大
自衛隊の派遣規模は、2009年からの護衛艦2隻とP-3C哨戒機2機に加え、人員が増強され現在は約580人である。
これまで海上自衛隊の海賊対処航空隊はソマリアの隣国であるジブチの米軍基地内に間借りしていたが、7月にジブチに自衛隊初の自前の海外拠点を開設した。

今後は派遣規模をさらに拡大し、護衛艦と哨戒機の数を増やす必要がある。あわせて、海上給油により護衛艦の活動範囲や頻度の拡大を可能にするため、補給艦を派遣すべきである。

また、海賊対処法では、外国の艦船への給油が想定されていない。そこで、国際協力による護衛活動の強化の観点から、外国の艦船への給油も可能とするため、同法の改正もしくは新法の制定により海賊対策を強化する必要がある。

(2) 自衛隊員や海上保安庁職員の乗船による警備強化
海運会社としては、船舶の放水装置や鉄条網、citadel(シタデル:避難所)の充実など自衛に向けた取組みを着実に進めることが重要である。

一方、船舶の自衛措置には限界があり、乗組員の不安を軽減し安心して乗船できるよう、多くの国々が自国の軍隊あるいは民間の武装警備員を自国籍の船舶に乗船させる措置を講じている。

わが国では民間人による武器の所持が禁止されていることから、日本船籍の船舶に武装した自衛隊員や海上保安庁の職員が同乗して公的な警備を強化すべきである。

*日本船主協会、経団連などは、ソマリア沖を通過して海賊の脅威におびえる日本関係船舶は年間2000隻以上、一回の護衛船団に10隻の日本関係船舶が加わることになると、強く護衛艦の派遣を求めながら、その後の船舶護衛の実情を報告せず、多額の国税を使う事になる「国に対して護衛体制の強化要請」ばかりするのは、国民の納得を得られるものでは有りません。
この半年、1ヶ月の日本貿易関連の船舶護衛数が10隻程度で推移している現状は、大手船舶会社の運航する船舶の2日ないし3日間の護衛に少なく見積もっても1隻あたり8000万円以上の国費と、酷暑のなか海上自衛官の厳しい任務遂行が行われている事への認識が足りていないのではないですか。
公的な警備を上から目線で要望する前に、協会としての船舶の自己責任、自己防衛への対応が急務でしょう。
海賊対処法による2年半の護衛期間中に護衛された日本籍船はたったの13隻と、ほとんど存在しないかのような日本籍船の公的武装警備の要請などの前に、現在運航する外国籍船に昼夜3交代で監視する監視専門船員を9名程度乗船させる事などは、不可能ではないでしょう。

写真は、海賊対処活動に従事する「EU艦隊」が啓蒙する商船の自己防御対策の例です。(EU艦隊では詳細なマニュアルも作成され、船舶運航会社にその対応を強く求めています。米国海軍もまた、海軍は海賊対処の経費負担に堪えられないと、自己防衛の必要性を訴えています)

EUのマニュアルでは、海賊から逃れる方法として危険海域の24時間体制の監視、襲われたら高速でジグザグに操船するなどと共に、電流有刺鉄線や、高圧シャワーを装備する事により、海賊被害から逃れられると教えています。
日本の対応をみると、日本船主協会は様々な対応を実施してきたと述べていますが、その具体的な実施例をついぞ見たことがありません。

ちなみに、昨年の7月にホルムズ海峡で、爆発事故があった商船三井の大型タンカー「エム・スター」や、10月に海賊に拉致されたと日之出郵船の貨物船「IZUMI」などの写真を見ると、こういった防御装備を見つけることが出来ません。
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「参考」
日本船主協会の要望書
「日本籍船への「公的」ガードの乗船に関する要望について」
(要望書画像はクリックすると拡大します)

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