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2010年7月 7日 (水)

海賊対処法によるソマリア沖船舶護衛その10(6月)----護衛艦「ゆうぎり」で隊員死亡

インド洋給油活動の時と同じように、派遣前には、あれほど大騒ぎしたマスコミが、その後まったく報じなくなった、海賊対処法によるソマリア沖派遣護衛艦の毎月の活動を書いています

*平成22年6月の海賊対処法による船舶護衛実績(142回護衛~149回護衛の8回)
 護衛した船舶 日本籍船 0隻 
           日本の船舶運航事業者が運航している外国籍船  14隻
                   合計14隻  1回平均1.75隻
           
               外国籍船 46隻  1回平均5.75隻
101_320
相変わらず海上自衛隊護衛船団に護衛される日本関係船舶は少なく、6月も8回の護衛に14隻と、平均1.75隻でした。

何度も書いていることですが、護衛する2隻の護衛艦より、守られる船舶のほうが少ない現状です。
それにたいして、日本の護衛船団に加153_320わる外国籍船は中国を筆頭に46隻と平均して5.75隻になります。

「日本の防衛大綱」において、わが国の防衛力を世界の公共財に供するなる思いがあるようですが、それにしても仮想敵国とする中国関連の船舶の護衛がもっとも多数というのは皮肉な状況です。

6月に護衛された60隻の船舶に、日本籍船は0隻ですが、乗船している日本人乗組員も、日本関係船舶を含めて一人もおりません。
このあたりが、大きな問題を抱える日本の海上輸送、海運会社の現状をよく表している数字です。

今回、例月より護衛回数が2回ほど少ないのは、護衛艦「ゆうぎり」の乗組み隊員の死亡事故が原因です。

Katsudou1_320 6月9日に第143回の護衛任務(地図上B点よりA点:西航)を終了し、僚艦「むらさめ」とともに、補給、休養のためジプチに向け航行中の護衛艦「ゆうぎり」が、ジプチ沖25マイル(約46km)の洋上で、隊員の3等海漕が艦内トイレで倒れているのが発見され、その後死亡が確認されました。
原因は、インターネットネット上では、いろいろ取り沙汰されていますが、統合幕僚監部からは、死亡原因は調査中と発表されています。

このため、「ゆうぎり」は第144回から147回の護衛には参加せず、ジプチに停泊しました。
この間、船団護衛は、護衛艦「むらさめ」単独で行われました。
「ゆうぎり」は、6月23日にA点よりB点(東航)への第148回の護衛から戦列復帰し 、船団の前後を2隻の護衛艦で守るという、通常の護衛船団形式に戻りました。

EU諸国や、韓国海軍、中国海軍の船舶護衛は、護衛艦艇1隻の後ろに縦列で商船が続くという形での護衛が行われていますが、海上自衛隊の場合は、ソマリア沖に派遣された当初から、2隻の護衛艦が船団の前後を守るという方式が採用されています。
したがって、今回行われた、「むらさめ」1艦による船団護衛は、海上自衛隊として初めての事なのです。
一部の報道で伝えられている、隊員の死亡事故の原因が艦内トイレの故障による排気不十分が原因としたら、酷暑の気温とはいえ、すでに第5次派遣部隊ありでもあり、浄化装置の高気温対策に問題があったと思わざるを得ず、厳しい物言いになりますが、護衛艦としてなんともお粗末としか言言いようがありません。
過酷な条件での海上勤務中にこころならずも死亡した23歳の若者に深く同情いたします。

韓国海軍の名を挙げましたが、対テロ戦争に関連して、日本も給油活動で協力した第150合同任務部隊(CTF-150)から、海賊被害の増加により、海賊対処専任部隊としてCTF-151が設立されたわけですが、現在この司令官は韓国海軍のイ・ボンリム少将(Lee Beon-rin)が任命されています。
CTF-151関連のサイトからこの名前を見つけた時は、韓国海軍が司令官を務めているという意外な事実に、ちょっと驚きました。
なお、日本は各国海軍との連携は取りつつも、中国、インド、ロシアなどと同じくCTF-151には参加していません。

昨年(2009年)3月から始まったソマリア沖に出没する海賊に対しての船舶護衛は、今後、いつまで続けるのか全く見通しがつきません
シーレーン防衛との関連は、あえて触れませんが、ジプチの基地建設といい、恒久的な派遣につながる可能性が強い船舶護衛について、もう少し長期的な展望から、作戦を考え直す時期に来ていると思います。
長い海上輸送路を、日本の護衛艦が行き来するだけでも、強力な海上防衛だという論旨(谷口智彦前外務報道官)では、あまりに策がなさすぎます。

あまり報道されないのですが、今までも二士クラスの深刻な隊員不足が伝えられています。今後も少子化の影響から海上自衛隊の隊員不足が慢性的になり、艦隊編成にも影響が出る事は避けられないと思うのです。艦はあっても乗組み員がいないという状況の事です。

往復45日間もかけてソマリア沖に派遣される護衛艦隊員の過酷な勤務を軽減する方策として、デンマーク海軍の多目的支援艦アブサロンやフランス海軍で採用されているような、艦を現地に派遣したまま、3ヶ月ごとに乗員が交代する方式も参考になります。
アブサロンの艦内は、隊員の居住環境が、他国の艦艇に比べて非常に快適だそうです。
艦長や、上級士官までが交代するというのには、驚かされます。

また、護衛を受ける日本関係船舶(タンカー、貨物船、コンテナ船、自動車運搬船など)が、護衛艦派遣前の想定の3割にも満たない状況から、護衛する船舶1隻あたりにかかる経費が、2日間の護衛で5000万円(国会討論よりとも算出されるなど、今後長期にわたる予算計上も問題になります。
この事に関して、年間の護衛対象船舶2000隻が危険な状況にある、早く自衛隊を出動させよと叫んだ、防衛省、国土交通省、日本船主協会、評論家諸氏、そしてメディアの関係者から、なんらの発言も聞かれなくなりました。
護衛する日本関係船舶の3倍もの外国籍船を守るなど、国民はまったく説明されていなかったのです。

海賊対処のために、自衛隊を派遣し護衛船団を組むことについては、賛否両論があってしかるべきと思いますが、今やジプチに自衛隊として始めての海外基地が出来たと、関係者の喜ぶP3C哨戒機の派遣も、2隻の護衛艦では手に余るので、それを補完するためと理由付けしての出動でした。当時、2隻ではとても不足だ、4隻出せないかとまで言い張った自民党議員までいたのです。
なにがなんでも実施してしまえば、後はなんとでもその実績を言い換えられる。
ダムや高速道路、大型橋梁などに見られる典型的手法を、自国の防衛問題にまで応用するのは危険であり、その後の検証がより求められるのですが、それが無視されることを危惧しているのです。
日本の大手海運会社が海外に船籍を移す事により、税負担を軽減し、日本人乗組員を締め出す状況を作りながら、海賊からの護衛は国の責任として、多額の税金を使わせて少数の企業だけが恩恵を受けている事には、納得できない国民も多いと思います。

事実、米国のCTF151関連で、海軍高官が海賊対処の高額な軍事経費に、今後の継続に疑問符をつけ、商船の自己責任論まで発言しています。
http://www.military.com/news/article/navy-looks-for-new-ways-to-fight-pirates.html


http://www.navy.mil/navydata/bios/navybio.asp?bioID=111
平均2隻に満たない日本関係船舶の護衛に、2隻の護衛艦がつくのではなく、今回、「むらさめ」が行った単独護衛方式を西航、東航にわけ、護衛船団編成の効率化も考えられます。

以前連載したインド洋給油関連のブログで、インド洋給油の継続より、保有するヘリコプター空母を、病院船も兼ねた多目的支援艦として、海上輸送路の近隣国やアフガニスタンなどに支援派遣して、友好関係を築くことが、将来の海上輸送路確保にとっても有効な手段になると書いたことがあります。
海賊対処を含めた海上輸送路の警護について、包括的、長期的展望による作戦立案が求められます。

ところで、「インド洋給油活動」仁ついては、海上自衛隊による給油活動の撤退から、連載ブログも終了させましたが、その後のCTF-150は、やむを得ず長期間、指揮権国を、任されたフランス海軍から、昨年(2009年)7月にパキスタン海軍に委譲され、その後12月にオーストラリアに、そして今年の4月からまたパキスタンが4度目の指揮権国になっています。
その活動状況についてはあまり公表されず、情報も少なく停滞気味である事が推察されます。
日本が給油を止めれば、海軍はほとんど活動できないのだといわれた(村田晃嗣同志社大学教授をはじめ評論家、コメンテータなど多数)パキスタン海軍が指揮権国を重ねて任されるのは、皮肉なことです。

また、日本が給油活動から撤退すれば、そのあとを中国海軍が引き継ぎ、活動地域を広げるとの
、中国側もあきれるほとんど根拠のない捏造記事を書いて煽り立てた産経新聞や、テレビで発言した岸井成格毎日新聞東京本社特別編集委員(現編集主筆)などは、防衛省、外務官僚などとの連携による世論誘導の典型だと思います。
全く少し油断すると日本のメディアは、何をしでかすかわかりません。

だいぶ脱線しましたが、今日のところは、このへんでお開きに。

(写真上、第5次派遣部隊護衛艦101むらさめ)
(写真中、同じく153ゆうぎり)
(写真下、海上護衛範囲---海上自衛隊HPより転載)

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コメント

海賊を避けるため、喜望峰周りを選択する外国船があるとの報道に対して、日本の海運会社が、迂回させれば1隻につき、経費が1700万円余計かかる。そんな事は無理だと発言していた記憶があります。しかし、僅か2日間の護衛に5000万円の血税が使われていたとは知りませんでした。
税金逃れの海運会社に、少し負担させましょう。

投稿: higeziisan | 2010年7月10日 (土) 18時02分

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