« 「八ヶ岳は華やいでいました」に追記しました | トップページ | 佐渡でカンゾウの花を見てきました »

2010年6月11日 (金)

賊対処法によるソマリア沖船舶護衛その9‐‐‐増えない日本関係船舶の護衛

インド洋給油活動の時と同じように、派遣前には、あれほど大騒ぎしたマスコミが、その後まったく報じなくなった、海賊対処法によるソマリア沖派遣護衛艦の毎月の活動を書いています。(防衛省、国土交通省海事局発表資料による)

*平成22年5月の海賊対処法による船舶護衛実績(132回護衛~141回護衛の10回)
 護衛した船舶 日本籍船 0隻 
           日本の船舶運航事業者が運航している外国籍船  22隻
                   合計22隻  1回平均2.2隻
           
               外国籍船 79隻  1回平均7.9隻

5月の護衛実績も、日本籍船は0隻、日本関係船舶も22隻と少なく、1回平均2.2隻となりました。
5月の全10回の護衛の内、日本籍船も日本の船舶運航事業者が運航している外国籍船0隻という船団が2回あります。(なお、護衛船団の日程報告からみて、5月は補給と休息の為、ジプチ(?)に2回寄港したと想定します。この間、護衛ができなくなっている状況や、その事情については、後日書きます)

 相変わらず護衛対象の日本関係船舶は増えません。
前回、海上自衛隊の護衛艦による2日間の護衛で、日本関係船舶1隻当たり3000万円以上の防衛費がかかると書きましたが、日本関係船舶数が増加しない状況から、海賊対処による特別予算を調べてみると、現在約4500万円程度かっているものと思われます。
かように、900kmの区間に限定されていても、シーレーン防衛とは金がかかるものなのです。

話が外れるのですが、国土交通省の発表によると、日本の重要港湾126港のうち、2007年度の貨物量実績が、需要予測を上回ったのは、僅か16港で全体の12.7%にしかないそうです。
残る110港は予測を大きく下回っているのです。
これは、日本運輸政策機構の空港需要の大幅水増しと同じ構図で、港湾もまた需要予測が過大評価に基づいて算出、建造されたことがわかります。

さすれば、海賊対処のために海上自衛隊が護衛艦を派遣する前提の、インド洋を航行する日本関係船舶は年間2000隻以上、1回に10隻の護衛船団を組まねばならない。
とても韓国などの船舶護衛まで手が廻らないといった需要予測もまた何らかの過大評価があったとしか思えません。
いくら、景気低迷の影響があるとしても予測の3割にも満たないのですから。

 海賊対処法による船舶護衛活動が始まった昨年7月以来、護衛している船舶の8割が外国の運航業者が運航する外国籍船で、中国の運航会社による船舶が最も多く、船籍でも814隻の船舶のうち日本籍は僅か8隻ですが、中国は90隻も占めています。

他国の護衛に頼っていては肩身が狭い、日本の船舶を守るべしと、海賊対処の護衛艦派遣が叫ばれていた時、護衛する日本の船舶が0隻の護衛船団など、想定されたでしょうか。
ましてや中国籍や、中国貿易の各国船舶の護衛が日本関係船舶より多い海上自衛隊護衛船団を想定したでしょうか。
かように、観念的思考で海上貿易航路の防衛を考えると陥りやすい過ちを、シーレーン防衛なるものに重ねて、今後検証してみたいと考えています。

田中 宇氏がジプチの自衛隊初の海外基地になるジプチ基地について次のように書いています。
 「シーレーン防衛に向かう日本」
【2010年5月17日】 ジブチでの自衛隊基地の建設は、控えめに考えるなら、自衛隊員に和食を出し、哨戒機の雨ざらしを避けるための施設を作る話になる。
しかし、貿易大国となったのに貿易航路の防衛を米軍に頼ってきた日本の戦後体制を考えると、本件は、日本が自分でシーレーンを防衛する方向性を示す話として画期的だ。
自衛隊は、すでに「テロ対策(テロ戦争)」の枠内で、米軍と一緒に公海上の臨検に参加し、インド洋で給油活動を行ったが、今回の基地建設は、それをさらに一歩進めるものとなる。

ここでも、日本が自分でシーレーンを防衛する方向性などと曖昧に書かれていますが、先ほど今後、検証してみたいと書いたのは、現実的にどういう事をシーレーン防衛と言うのか、それを具体的に一つ一つ紐解いて考えないと、なにか、産油国と日本を結ぶ線しか頭に浮かんでこない論議になると思うからです。

どんな状況のもと、何処で、何処の国から、どんな船舶を、自衛隊の誰が、何処の国と連携して、どのくらいの期間、どのように守るのか、具体的な論証を聞いたことは無いからです。
それらを考察していくために、海賊対処として行われているソマリア沖の船舶護衛が、問題提起の具体的な検証例になるものと思います。(海賊対処の護衛船舶の数量や、航行日程、船舶の航行速度さなど、なにも検証されていないまま護衛艦は出港し、最初は護衛船団の組み方にさえ戸惑ったと報告されています)

例をあげれば、護衛船舶の国籍でもわかるとおり、今や中国との経済的つながりを考えると「仮想敵国」と呼べるのか、有事に守るべき日本籍船はあるのか、船を動かす日本人船員の確保は壊滅状態では無いのか、ミサイル攻撃もあり得るタンカーの危険な航海を外国人船員が対応してくれるのか、などなど、海上自衛隊の戦力的対応以前の問題が垣間見えてきます。
今日は、ここまでとします。

|

« 「八ヶ岳は華やいでいました」に追記しました | トップページ | 佐渡でカンゾウの花を見てきました »

コメント

シーレーン防衛を声高に叫ぶ人たちは、航行中のタンカー、貨物船、自動車運搬船などが、他国にどのような状況のもとで、攻撃、略奪、拿捕されるような事態の具体的状況には、触れたがりません。海上、海中を行き来する海上自衛隊の艦艇の存在が、防衛と、抑止力となるのだという、強い信念です。海上自衛隊の隊員不足、特に2士不足が深刻です。10年~15年後には、シーレーン防衛なるものの、考え方が大きく変わらざるを得ないと思っています。
残念ながら、そこに至る総合的戦略がなにも無い現実があります。

投稿: gohei | 2010年6月12日 (土) 23時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「八ヶ岳は華やいでいました」に追記しました | トップページ | 佐渡でカンゾウの花を見てきました »