間引きした芽を、押し花にしたチビスケ
立派なトマトだべ。おらの農園で昨日採れただよ。
今年はトマトが元気だよ。もちろんおらが丹精しただよ。
トマトさ、やはり芽かきと摘心だな。
それにつきるべ。
おらは、どんな野菜でも、間引きと芽かきさ、苦手だ。
うまく出来ねえだよ。
その点、農園主さまはすげえよ。
顔に似合わず情け容赦なく苗は間引くし、芽かきさするだよ。
そったらとこさ折ったらいけねえと、思うまもなく茎の先までバサリとやるだよ。
「摘心も覚えなさいね」だと。
おら、なんかかわいそうで、とても真似さできねんだよ。
だども、トマトはそれが良かっただな。背はわりと低いが、しっかりと根を張って
もう実が鈴なりだ。
トマトは、女さ作るもんだな。
そんでも頑丈な支柱さ作り、うんと手入れしたのは、おらだよ。おらだよ。
間引きと言えば、おらの大事なチビスケ1号だども。チビスケ1号って誰だかって。
ほら、一緒に月山に登ったり、沢登りでササダニにとっつかれたあのチビスケだよ。
2号もいるだよ。
その1号が、学校の授業で、インゲンだか、エンドウだかの種さまいて、植木ばちさ入れて家にもって帰ってきただと。
しばらくして、芽がでたら、間引きしなくちゃなんねえべ。
それがちょこんと伸びてきた苗がかわいそうで、なかなか間引き出来ねえだよ。
このまんまじゃ、育たねえと、親が代って間引きしてやっただよ。
家さけえってきたチビスケ1号は、びっくりさ。
あわててゴミ箱から、間引いた苗を拾い出してきて、押し花にしただとよ。押し花じゃねえ、押し芽だな。
優しい子だよ。なんと、おらのちっちゃこい時とそっくりでねえか。
だども、心配もあるべさ。この優しさで、世間の荒波さ、越えていけるだべか。
こわーい農園主さまに、じっくり仕込んでもらうべかな。
そったら、おらぐらいにはなるべさ。
女農園主「おらぐらいでは困りますよ」
ありゃ、聞いていただか。壁に耳あり、障子に目ありだな。
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