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2009年7月19日 (日)

ゴアテックス雨具への過剰な依存----大雪山系トムラウシ山遭難に思う

勿論、僕も愛用していますが最近の登山用ゴアテックス雨具の性能は素晴らしいものです。
軽量かつ蒸れ難いし、水滴は良く弾く。

50年前の登山の事をいうと笑われるでしょうが、今回遭難した方々も60歳以上の方が多く、それほど関係の無い時代の話ではないのです。

50年程前、当時は山で使う雨具で、市販されている製品はほとんどありませんでした。
今から考えるとおかしいのですが、木綿製の防水ヤッケが雨具と考えられていました。
それ以外には、米軍放出のポンチョを使う登山者もいましたが、風に弱いので、稜線では役にたたず、ましてや岩場で使える代物ではありませんでした。
ヤッケも、小雨程度では役に立ちましたが、強い雨では、すぐに水が沁みこんできてしまいました。
そこで、僕等が使ったのは当時ゴルフプレー用に開発されたズボン付きの雨具でした。
透明で、ビニールだったのでしょうか、そのへんはっきりしないのですが、ちょっとガサガサする素材で、その中に木綿糸が縦、横に縫い込まれていて、簡単には破れない強度がありました。初めて使用して時は素晴らしい物があるものと感激したものです。
それでさえも、着ると蒸れるし、ボタンで留める前併せの隙間からは、雨は容赦無く侵入してきました。

「何を言いたいか!」

そうです、やむを得ない場合以外は、雨天は停滞日であり、行動は避けたのです。
無理をして行動し、雨具が悪い為に、今ならこんな場所でと思われるところで、疲労凍死する登山者も多かった時代です。(登山路で古い遭難碑を見ることが時々あります。今と違って皆、若者達です。)

それが最近は、雨具の飛躍的性能向上により、雨天の行動が普通になってしまいました。
大荒れでなければ、平気で小屋から雨と霧の稜線へと出発して行きます。
ゴアテックス製の軽量雨具であれば、終日行動しても、雨から受けるダメージは少ないからです。

 昔は、天候急変などの場合以外は、強い雨風の場合の行動は危険であり、無謀とされたのです。
それでも下山日の降雨や、避けられない行動中の天候急変に対して、持つべき物とされたのが厚手純毛のセーターでした。
山岳部によっては、今では見る事も出来ない純毛の海水パンツを奨励し、実際に使用している者もいたのです。本当のことです。どちらも濡れに強かったからです。
今は、夏山では速乾性のある軽量ポリエステル衣類が主流です。
防寒用のフリースも軽量です。ダウンインナーもありますが、濡れると防寒性能が極端に低くなります。
小屋では、軽量で性能の良い寝袋で暖かく寝る事が出来ます。
小屋の外が少し寒くても、フリースか、雨具の上着で用は足ります。
そんな事から、雨天での防寒対策が取られていないのです。
みんなが、ゴアテックス雨具に依存しすぎています。

 ゴアテックスといえども、何日か雨中で使用すれば、擦れあった部分などから、雨水が染み込んできます。特に強風だと雨水はより染みてきます。
それ以上に、経年した製品は、水滴のはじきが無くなり、驚くほど防水性能が落ちてしまいます。
新品との防水性能の差は大きく、多分5年も使用していたら、雨具としては落第でしょう。

 以前、5年以上使用した古いゴアテックス雨具を着けて、奥日光の湯の湖でボート釣をしていたら、突然の豪雨にみまわれ、慌ててボートごと樹木の下に逃げこんだのですが、着ていないほうが濡れないのではないかと思うほど、ずぶ濡れになり防水性能の劣化に驚いたものです。防水スプレーの効果はあまり無かったようです。

 対照的に、購入したばかりの新品の高性能を謳ったゴアテックス雨具を着用して、無風ながらかなりの降雨の中、南アルプスの塩川土場から三伏峠小屋まで登った時、途中で下山したきた登山者が僕の雨具をみて、下はほとんど降らなかったんですねと聞いてきました。それほど水滴を弾いて、雨具が濡れていなかったのです。

大雪山系トムラウシ山で遭難した登山者の、雨天での防寒対策装備を知らずに、あれこれいう資格はありませんが、ゴアテックス雨具にあまりに依存しすぎていた事は考えられます。
ゴアテックス雨具と言えども、1日中降雨の中で使用すれば雨水が染み込んできます。特に防水性能が落ちていればなおさらです。
山小屋で吊るして干そうとしても、その場所が無いほど混雑している場合もある事は、多くの登山者が体験しているでしょう。
翌日、生乾きのまま、それを着て雨の稜線に向けて、出発せざるを得ないのです。

 僕も今回の遭難事故を知って、軽量化を計るばかりで、夏山での雨天行動時の防寒対策をおろそかに考えていた事を反省しています。
どんなビバークも平気と思いながら、それでも雨天を甘く考えすぎていました。
昔、谷川岳南面、幕岩での雨のビバークの朝、ツェルトから顔を出している僕の写真を撮った友人は、がたがた震えながら薄日に手を合わせるような僕の様を見て、「暁に祈る」だなと笑っていました。
若さで出来たことです。老齢者の体力の衰えを痛感している今、無理は禁物と心に決めています。
トムラウシ山のガイドは、メンバーの体力差と装備の優劣に悩んだ事でしょう。

 古いものですが、上等の純毛登山セーターは持っています。濡れた物を脱いで、肌の上に直接着ます。これを着れば低体温症はかなり防げるでしょう。凍死はつらいです。
ただ、あまりにかさばりすぎ、重すぎて、持って行く事をためらうのです。。
晴天時のダウンインナーの軽量で快適な着心地になれてしまったからです。装備の軽量化との両立に、悩み多いところです。

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コメント

■大雪山系遭難:「寒さ、想像超えていた」 ツアー社長会見―ドラッカーが救ってくれた苦い経験のあるトムラウシ山
こんにちは。今回の遭難10人もの人たちが、凍死です。北海道は、真夏でも、特に海や山は、本州では考えられないほど寒くなる場合があります。寒さ対策が肝要です。私も、昔のこの近辺で道に迷ったことがあります。そのときに、経営学の大家ドラッカーの著書に書かれてあることを思い出し、機転を利かせて、危機を脱することができました。それ以来、ドラッカーの著書をかなり読むようになりました。大事なことは、企業経営でも、登山パーティーでもビジョン(方向性)を持つということだとを身をもって知ることができました。ここに、書いていると長くなってしまいますので。詳細は是非、私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2009年7月20日 (月) 10時52分

還暦を迎えて思い出すのは、亡き父との半世紀前の登山です。
ゴアテックスなど無かった時代はゴム合羽で雨を凌いでました。
ザックも水筒も帝国陸軍製だった気がします。
唯一帽子だけが米軍空挺部隊の物でした。
戦後65年経ちましが、今も現役でかぶってます。
セーターも脱脂してない特注セーターがお気に入りです。
化学繊維は素晴らしい素材を提供し、私どもは享受してますが、完璧であると誤解し易いですね。
優れた素材も気温が高く水蒸気である時は蒸れませんが、低温時には汗も直ぐに水滴に変化し、通気性はないようです。

投稿: しびっく | 2010年6月25日 (金) 23時02分

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