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2008年5月20日 (火)

海上自衛隊インド洋給油事情その3

425_320  今年の1月11日に、57年ぶりという参院で否決された法案の、衆院再可決によって成立したテロ対策特措法によるインド洋給油再開ですが、マスコミには取上げられず国際貢献の大義名分もこのところ影が薄くなっています。
最多の給油回数のパキスタン国民の大多数は、日本の給油活動の存在さえ知らず、そんな事をやってくれていたのかという外交官までいたと報道されていま107_320す。
 そんなインド洋給油事情ですが、海上自衛隊による4月の給油状況の報告をみながら、少し考えてみたいと思います。
4月の各国に対する給油回数は、次ぎのようになっています。
(  )内は給油再開の2月21日からの2ヶ月半の累計です。
  
  パキスタンフリゲート艦  1 (5)  160KL (NO.181かNO185)
  フランス補給艦       1 (5)  450KL (フランスの補給艦登場は珍しい) 
  米国駆逐艦         1 (1)  500KL
  英国駆逐艦         1 (1)  95KL


給油量は、1,205KL(3145KL) でした。
パキスタンフリゲート艦の給油回数が、今月は少なすぎる。
フランスの補給艦への給油は、始めてではないか?。
米国の駆逐艦に対する給油量が1回の量にしては多すぎる?。どんなタイプの駆逐艦?。
 平成13年から始まった給油のデーターを、調べているといろいろわかってくる事もあります。今月の疑問点も、調べて見る事にします。

 発表された4月の給油回数、給油量は以前と比べると各段に少なくなっています。
例えば、イラク戦争当時の2003年には、米国の艦艇だけでも年間67回、全体の給油量は78,000KLに及びました。月間にすると6,500KL(米国のみ)です。
現在の6倍の量です。
2006年でさえ47,000KLの給油量がありました。
わかりやすく云うと、今までに70リットルタンクの乗用車を満タンにして、800万台分以上の給油をしてきたのですから。

新テロ対策特措法案の「定義」第3条に「補給支援活動」について、次ぎのように書かれています。
 テロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するため、自衛隊がテロ対策海上阻止活動に係わる任務に従事する諸外国の軍隊等の艦船に対して実施する自衛隊に属する物品及び役務の提供(艦船もしくは艦船に搭載する回転翼航空機の燃料油の給油又は給水を内容とするものに限る)に係わる活動をいう。

この目的に限れば、月間の給油量はどうやら、現在の1,500KL以下程度が、妥当な量なのかもしれません。
すなわち、以前の給油量が異常であり、他の目的に使用されていた可能性が高いと云うことでしょう。
パキスタンに限っても、2006年8月から2007年の8月までの1年間に50回近い給油を行い、これがパキスタンは給油を他の艦艇に横流ししているなどの噂を立てられた由縁です。

テロ対策特措法の成立前に、毎日新聞に「延長が国際社会の要請」なる文を書いた同志社大学教授の「村田 晃嗣」氏はこう書いています。

「インド洋では7カ国が海上自衛隊による、給油に依存している。海上自衛隊が撤退すれば、パキスタンの艦船は活動できなくなるという。」

 村田氏は、パキスタン海軍の現有勢力や、主として給油を受けに来るフリゲート艦1隻(政府答弁による海上阻止活動の従事艦艇数)の状況を理解していなかったのでしょう。パキスタン艦船が活動できなくなる理由はわからないのに、「できなくなるという」表現であらわしました。と云ったのは誰なのか?が曖昧なまま、論旨をまとめようとしています。
同じように、その後の文でも「アメリカをはじめ給油を受けている諸国の海軍は、およそ4割の活動低下に陥ると推定されている」
これも、嘘です。4割の活動低下も具体性に欠けるし、実際にその後も活動低下は報道されませんでした。推定したのは誰なのか?が曖昧です。
まだあります。
「確かに、イラク政策をめぐっては、アメリカ国内でも論争が激化している。だがことアフガニスタン問題に関するかぎり、一枚岩だということも了解しておかねばなるまい。」
 これも一枚岩と結論ずけて、了解させようとしても無理です。
「08年の大統領選挙で民主党が勝てば政策が変わると考えるのは、まったくの誤解である」
皆が誤解しそうになっているようです。

この程度の論旨を、新聞に掲載して世論を誘導しては大学教授の名がすたります。
パキスタンは、海軍艦艇への給油もできないほど、困窮している中での海上阻止活動従事ではなく、国内にアメリカ主導のテロ対策支援への反発が強い複雑な国内事情があるのです。現にこの時点で、新鋭駆逐艦3隻を中国に発注していました。

航空自衛隊によるイラク派遣をめぐる違憲判決の出たなかで、続行されている空自の兵士輸送は、当初の海上自衛隊のインド洋給油と同じように、作戦行動に支障があるとの理由で情報がまったく開示されません。
実際には、輸送能力と実際の輸送実績の数字がかけ離れていて、空気を運んでいると揶揄される面もあると報道されていました。
そのへんが、隠蔽や嘘の情報を報告した、どこか後ろめたい再開以前の海上自衛隊のインド洋給油と相通ずるものがあるのでしょう。
海上自衛隊が、インド洋における給油活動を、毎月の数値まで含めて公表し始めたのは、世論もあるでしょうが、法の期限切れである1年を目処に、撤退も意識しての事と考えられます。
航空自衛隊も、違憲判決に影響されないと云い切りましたが、多分士気も上がらず、撤退の潮時を模索し始めている気がします。

インド洋給油は、これからも毎月海上自衛隊から発表される支援活動の実績を踏まえて、毎月定期便で書いてゆきます。
 (写真上、現在インド洋で給油活動に従事している補給艦425「ましゅう」)
 (写真下、同じく護衛艦107「いかづち」)

 

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コメント

私もこのインド洋上の給油活動はものすごく数字的に嘘があるなと見ています。第一合わないことばかり。だいたい、給油活動にかかる費用というのは原油だけでなく、海上自衛隊の人件費も何もかも入れてのことなのか、はかり方が違うのか、桁の違う数字が出てきてその上ドルだてにしたり、円だてにしたりして、庶民には数字を小さくしてごまかしている。NHKは、今年の夏に07年の12月までに800回600億円を投入したと言っていて、その直後に防衛省に聞くと今年は350億円を1月から6月までの半年間に使ったと言ったのに、赤旗では07年10月までで225億円と書いてあるし、08年の防衛白書では、おおよそ1カ月1,5億円だとか。また、別なところでは2008年4月から2009年1月の剰余燃料および活動経費のための予算額が0,7億ドル、すなわち77億円と書いてあるのです。全く、数字をごまかしているのか、関連が案にもわからない。原油値段だけ出しているのか、自衛隊派遣費用も入れているのか、そんなこと知っちゃあいないと言っていそうだな。ごまかしたいのね。だけれども、最も問題なのは、パキスタンがインドとの国境に軍をすすめたという時になっても、インド洋上で給油活動をしていくのかということ。これ一つを見ても給油活動は、おかしい。何も考えていない。パキスタンとインドに、もしも双方とも発砲するならば、給油を日本はやめると、即は発言するくらいの外交力も持てていない。だらしない。日本の政治家は。日本の若者が、ホームレスになっていても、派遣社員が切られても、自国の国民の面倒さへ見れないし救済もできない。人に金を貰った時に、心をこめてそれを使う人間性をもった国ならば、絶対人を殺したりする武力を正当化なんてしないと思う

投稿: 小松梨津子 | 2008年12月11日 (木) 23時21分

>小松さま
確かに発表される数字は、わかり難いと思います。米国海軍のHPには掲載されているようなことでも、防衛省は機密を盾に妙に隠そうとします。
やはり、丹念に情報を収集し、積み重ねると、見えてくるものがあると思います。しつっこくやりましょう。
パキスタンとインドとの関係悪化は僕も心配しています。双方の艦艇が小競り合いでもするようになると、日本の給油活動は微妙なものになると思うからです。何しろ全給油量の3分の一はパキスタンフリゲート艦にたいして行なわれている実情がありますから。

投稿: Souroku | 2008年12月15日 (月) 22時37分

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