« 超ミニ農園の失敗 | トップページ | 四谷東福院その3 »

2006年8月20日 (日)

ナチスの影ーギュンター・グロス

Ggrass1_320  今月始め、著書「ブリキの太鼓」などで知られる、1999年のノーベル文学賞の受賞者であるドイツの小説家、ギュンター・グラス氏(1927年生)が、17歳の時にナチス・ドイツの親衛隊に所属していたとして、ノーベル賞を返還すべきだなどの批判を受けていると報じられました。今までにもナチス・ドイツとの暗い過去を問われた著名人は多いのですが、氏の場合も自ら告白した事とはいえ、厳しい立場に追い込まれてしまいました。
4月12日に「ナチスの暗い影ー監督と登山家の場合」で書いた、僕が尊敬するアイガー北壁の初登攀者である、登山家ハインリッヒ・ハラー氏も、晩年にナチス・ドイツの親衛隊員である事を、暴露され窮地に陥ってしまいました。どちらもドイツの政治問題週刊誌「シュピーゲル誌」が報道したようです。
ハインリッヒ・ハラー氏は、オーストリヤ生まれですが、当時ドイツに併合されて、ドイツ国民にされていました。ギュンター・グラス氏もまた、現在はポーランド領になっているダンツィヒ自由市で生まれました。父親はドイツ人、母親は少数民族のカシューブ人でした。ハインリッヒ・ハラー氏の著書、アイガー北壁登攀史「新編白い蜘蛛」の訳者である長谷見 敏氏は、訳者あとがきの中で、次のように書いています。
 「522頁引用」
 彼の家を訪ねる途中、まだ山陰に雪の残る雪の残るチロルの村々のガストハウス(宿屋)の酒場でいろいろな村人の話を聞いた。ハラーの事はみなよく知っていた。老人達の話が私の気持ちの救いになった。「三十年代の初めはオーストリヤは政治体制の崩壊と極端な不況で失業者が溢れていた。オーストリヤにもナチスが台頭したが、これは出口の無い若者を惹きつけた。三十六年のベルリン・オリンピックは、ゲルマン民族の身体能力の優秀性を宣伝したものだ。体育団体は特に民族主義的な精神で組織化されていったし、ナチに同調して党員になったものも多かった。それが時勢だった。山狂していた若者がナチスの親衛隊員になったとしても、邪気のあったものではないだろうよ」

ギュンター・グラス氏もまた、ドイツ、ポーランドというふたつの国、そしてさまざまな民族の間の狭間で揺れる祖国で、15歳にして労働奉仕団・空軍補助兵になり、ナチスの武装親衛隊に入ってゆく過程に、ハラー氏と同じ構図を感じてしまいます。しかし過去の過ちをしっかりと見据えるヨーロッパでは、ナチス・ドイツの暗い過去は、見過ごされる事は無かったのでした。
8月18日(金)の毎日新聞夕刊に、「アウシュビッツを訪ねて」と題した記事が掲載されました。アウシュビッツ強制収容所は、ポーランドの国立博物館として公開され、1979年にユネスコ世界遺産に登録されています。ここの約180人いる公式ガイドの中の唯一の日本人ガイド、いや唯一の外国人ガイドである中谷剛さんに館内を案内された時の報告記事です。その記事に、各国訪問者のうち、14~25歳の若者が半分以上を占めるが、日本人は他国に比べ若者の訪問者数が少ないとの事です。そして過去の負の遺産を現在につなげようという周辺国の姿勢にも学ばされたと書いています。ハンガリー、フランス、オランダ、イタリア、ベルギー、オーストリア、旧ユーゴスラビア、チェコスロヴァキア、ポーランド、等の国々が自国の戦争被害だけでなく、ユダヤ人の強制収容所への移送に自国が協力した事実を写真や映像で伝えているという事。ナチスドイツによる大きな被害を受けた各国が、同時に加害者としての過ちを認めて、後世に伝えようとしていると感じたと書いています。そしてその展示費用はその国の負担だそうです。
中谷さんは、日本からの訪問者には、過去にアジアに対して犯した罪についても語るようにしている、日本の若者に、日本が過去に何をしてきたかについても目を向けて欲しいと語っています。
『人類が二度と繰り返してはならない20世紀の負の遺産』として、アウシュビッツ強制収容所と共に挙げられる広島の原爆ドーム。 今、この横に高層マンションを建設し、原爆ドームをして、市街地にこのような廃墟を残す意味がわからないという発言まで聞かれる日本の現実があります。
小泉首相の靖国神社参拝の強行に見られるような、戦争責任を曖昧にしてきた日本の社会。なぜなら靖国神社は日中戦争や太平洋戦争を「自存自衛の避け得なかった戦争」との立場を崩さず、A級戦犯を「昭和殉難者」として称え、A級戦犯だけを合祀しないのは極東裁判を認めた事になるとしています。国民を塗炭の苦しみに追いこんだ太平洋戦争中、僕も空襲下の東京を逃げ惑う両親と離れ、石川県、福島県と厳しい食料事情の中、疎開先を転々としました。戦争は死んだ、いや、親や兄弟、愛する人を守りたいとの思いのなかで、国に殺された兵士だけでなく、空襲や悲惨な原爆、戦闘に巻き込まれたたり、食料、医薬品の不足などで死んだ多くの人々をも犠牲にしました。小泉首相が曖昧な言動を繰り返しつつ、最後に「心の問題」と逃げるなら、僕にも心の問題はあります。侵略戦争に突き進む日本を止められなかった親の世代での過ちを、絶対に繰り返させないとの思いです。首相たるもの、自分の意地からの心の問題ではなく、多くの戦争被害者や、侵略された国の人々の心の問題を真剣に考え、明確な発言のもとに行動すべきです。最近は戦争責任を、しっかりと見極めようとせず、侵略戦争を正当化する発言なども目立つようになりました。憲法改正、教育基本法、防衛庁の防衛省昇格などの動きに注目しています。過ちを繰り返させない為には、何よりも選挙への参加だと思います。投票率が40%にも満たない選挙があります。この選挙と投票率の事についてはまた書きます。

|

« 超ミニ農園の失敗 | トップページ | 四谷東福院その3 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170544/11525693

この記事へのトラックバック一覧です: ナチスの影ーギュンター・グロス:

« 超ミニ農園の失敗 | トップページ | 四谷東福院その3 »